2026年(令和8年)9月1日 発行
北川 美香 氏
教育学科同窓生の皆さま、「更生保護」って耳にしたことがあるでしょうか?
私は、教育学科を卒業後、法務省保護局に入省して以来、「更生保護」の領域に身を置いているのですが、実は私自身、学生時代は「更生保護」のことを知りませんでした。
「犯罪や非行は自分とは関係ない」「悪いことをして処分された人の立ち直りなんて難しいのでは」「被害者支援は薄いのに、加害者の方を支援するなんてアンバランスだ」などと懐疑的でありながらも、官庁訪問時の説明や、父の知り合いの保護司さんの話を聴いたりして、「立ち直れないと再犯につながって新たな被害者を生んでしまう」「教育学科で学んだことも活かせるかも」「誰かがやらなくてはならないことかも」と思うようになりました。
実際に保護観察官として犯罪者・非行少年と関わると、「人って変われるんだな」と実感することも多く、教育学科での学びを実践できている感覚にもなりました(処遇を施すことで全てのケースが改善更生するわけではないのが残念であり、課題ですが)。また、日本の「更生保護」の特色は、国家公務員である保護観察官のみで行うのではなく、保護司など民間の方々と協働して取り組む点にあります。保護司などの「更生保護ボランティア」は、処遇に関わるだけでなく、犯罪・非行の防止を図りながら、皆さんが安全・安心に暮らせる社会を築こうと、各地域で奔走しています。
当日は、昨今の犯罪・非行の状況と対策、課題などに触れつつ、「更生保護」についても理解を深めていただけたらと思っております。皆さまにお会いできることを楽しみにしております!
(北川 美香 氏 寄稿)
【北川 美香 氏 プロフィール】
1970年生。群馬県立桐生女子高校卒業後、1988年4月、上智大学文学部教育学科入学。大学3年時、新たに着任された香川正弘教授の生涯教育ゼミに所属。
大学院進学を視野に入れつつ公務員試験にもチャレンジしたところ合格し、法務省入省(国家Ⅰ種・教育職)。法務省保護局、更生保護委員会(関東)、保護観察所(東京、さいたま、千葉、宇都宮)等の更生保護官署のほか、国連アジア極東犯罪防止研修所で教官を歴任。今春より現職。
夫は法務省矯正局所属。約20年前から各地の矯正施設と法務本省を行き来する勤務で、夫の単身赴任中、ワンオペ子育て・家事に奮闘。長男・長女の成人を機に転居を伴う転勤を命じられ、現在、初めての北陸暮らしを楽しんでいる。
(1995年卒 杉浦 元一)
講演会で熱く語りかける野池氏
2025年度の会員大会は、11月9日にソフィアンズクラブにて開催されました。講演会の講師には、リクルート社出身で、昨年会社を設立して31歳でCEOとなった野池怜溫さんをお迎えしました。その講演内容の一部をお伝えします。
◆ 現在の人材業界に違和感⁈
現在、人材紹介業の手数料は35%で若い世代を中心に増えてきています。人材業界での経験で、私は大きな違和感を抱くようになりました。それは、上智大学の「他者のために、他者と共に」という教育理念と、人材業界の現状との乖離です。現在の人材業界では、企業が高額な手数料を支払い、ミスマッチな候補者を紹介され、結果として求職者が早期に離職するという負のサイクルが続いています。
◆ 実は企業側の本質的な課題?
このミスマッチの原因を分析すると、企業側には3つの本質的な課題があります。第1に、企業理念から戦略、そして採用施策までが連動していないこと。
第2に、理念と事業が乖離した「盛りすぎ」の求人や、逆に魅力を訴求できていない「味気ない」求人が蔓延していること。そして第3に、人間関係やマネジメントの不全が放置されていることです。
◆日本の労働市場は人手不足!
少子化・高齢化という深刻な構造的な問題により、特に生活の維持に必要な物流や建設・土木、介護・福祉、接客などの現場において慢性的に人材が不足しており、今後、十分なサービスを受けることができなくなる可能性が高まっています。
◆ 40代・50代には厳しい?
独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構の調査データによると、この年代は転職市場において大きな課題に直面しています。この世代は、企業側のミスマッチにより、高額な手数料を支払っても適切な人材とマッチングできず、早期離職につながる悪循環に陥りやすい構造的な問題を抱えているようです。
40代・50代についてはリスキングの如何に関わってきそうです。
◆ AIの活用―光と影
ソフトバンクのような大企業では、潤沢なリソースを活かし、AIを活用し選考プロセスを効率化することで採用時間を七五%削減する等、大きな成果を上げています。
一方、中小企業では状況が全く異なります。そもそも応募者が少ない中で、AIによるスクリーニングを導入しても効果が限定的です。むしろ過剰なフィルタリングにより、少ない応募者から更に候補者が減少してしまいます。中小企業に本当に必要なのは、AIによる選考効率化よりは、応募者数を増やす施策と入社後の定着率向上と離職率低下なのです。
◆ 私自身の取組み―本質的な課題解決への一貫したアプローチ
そこで私が提案するのは、認知から定着まで一貫したアプローチです。採用プロセスを「認知→興味→理解→応募→定着→活躍→ロイヤリティ」というファネル(漏斗)で捉え、各々の段階で適切な施策を実施します。
◆ 認知拡大には、TikTokを活用
アルゴリズムによって興味関心の高いユーザーに自然に表示され、建設業や運送業など人材確保が難しい業界でも効果的にリーチできます。業界特化型アカウントを運用し、業界特有の悩みに共感する内容を発信することで、実際に数百件のコメントを集め、求職者との接点構築に成功しています。本当に作業現場の景色を載せたりするだけで応募してくれるのです。
◆ 興味・理解から応募へ繋ぐ「コトダマ採用」
中小企業が選ばれない理由は、大企業の模倣により「強者と同じ項目」で勝負して負けることにあります。コトダマ採用では、差別的優位性の確定、ペルソナ設定、チャネル設定、ストーリー作成という四つのステップで、応募したくなる求人文章を策定し、本質的なマッチングを実現します。例えば、「【職種】ねじ・機械要素部品の営業販売。【仕事内容】法人への機械要素部品の営業販売をお願いします」という求人広告よりも、まず「北の製造業を救う~北海道を元気にする営業職~」という使命感のあるキャッチコピーで応募者の関心を高めます。次に北海道での部品サプライチェーンの課題による競争力の低さなどの難点について親しみある語り口で伝え、最後に「私たちは雪をも溶かす熱量で、製造業を支える隅田鋲螺製作所です。鋲螺とは釘やネジのこと。強い『結束力』を目指しています。大阪で創業した弊社は、関西を中心に500社を超えるサプライヤーと結束し『良い部品を最適な価格で』仕入れていきます。そして日本中の製造業に『安く、早く、良い部品を提供』します」と前述の4つのステップでまとめてある方が分かりやすいですね。
◆ 定着・活躍をサポート「パーパス経営コンサルティング」
企業の存在意義とコアバリューを定め、事業と組織を変革します。特に会社員が自然に体現することができるコアバリューを決めていくのは大変です。
企業理念から戦略、採用施策までを連動させることで、社員のエンゲージメントを向上させ、何よりも早期離職を防止し、長期的な人材定着を実現すること、これが大切なのです。
◆ 今後、私が目指す姿
私はこれらの取り組みを通じて、「他者のために、他者と共に」という上智大学の精神を体現し、働く人と組織の幸せを実現したいと考えています。表面的な効率化ではなく、本質的な課題解決により、企業と求職者の双方が幸せになれる採用の形を追求してまいります。
皆さんとも是非この機会に繋がらせていただければ幸いです。人との良い繋がりが輝く未来を築くことになるのです。
( 1993年卒 森沢 洋子 )
左から、藤村和佳さん、吉冨玉桜さん、
松下くららさん、佐賀美月さん、平野青波さん
7月16日の第2時限に、学科学生指導室をお借りして、1年生5名へのインタビューを行いました。
聞き手は長尾会長と前会長の栗原です。
― まず、上智の教育学科を選んだ理由をお話しください。
佐賀
出身は横浜です。高校では、ずっと上智大学を希望していましたが、教育学科を選んだきっかけは、「上智地球市民講座」で相澤先生の講座に参加したことです。上智の教育学科が教員養成だけでないことにも惹かれました。
平野
熊本県出身です。高校で外部ボランティアグループに所属し教育問題を議論する中で、教育の保障を考え始めました。2年連続参加したオープンキャンパスで、先輩方から教育学科は俯瞰的な視点から教育を学べると教わり、酒井先生が学びの保障について研究されていることで決めました。
松下
静岡市出身です。中学3年で上智大学に行きたいと思い、上智の提携校である私立高校に進学しました。ボランティア活動を通して、途上国の教育支援に興味を持つようになりました。オープンキャンパスには高校1年から3年間参加し、特に小松先生のお話に惹かれて、ここだと決めました。
吉冨
東京の私立中高一貫校出身です。クレオール語に興味がありましたが、ニュージーランド留学後に外国ルーツの子どもの教育支援ボランティアを始め、高校の卒業論文のテーマにして、志望を教育学に決めました。中学3年から視野に入れていた上智大学には国際性があり、自分のテーマと親和性があると思い決めました。
藤村
都立高校出身です。国際科在籍で、国際性に富んだ上智大学に憧れていました。また、姉が他大学で教育学を学んでいて、私も興味を持つようになりました。オープンキャンパスには高校2年から参加し、3年の時に野々村先生の教育史の講義を受け、とても面白く、ここしかないと思いました。
― まだ学び始めて3ヶ月の皆さんですが、学びを通しての気付きを聞かせてください。
佐賀
学校教育を学ぶことで、今まで興味のあった日本語教育や学校での日本語支援に強い関心を抱き始めました。学べば学ぶほど色々なことへの関心が出てきます。就職について他の選択肢も視野に入るという意味で、1年次の学修は理想的な形で用意されていると思います。
藤村
教育社会学や国際教育学に興味がありますが、奈須先生の教育方法学が、先生ご自身も含めて(笑)とても面白く、教員も視野に入れていることもあり、カリキュラムの話をとても興味深く聞いています。
松下
私の関心は国際教育開発学の領域にあり、教職にはあまり興味がありませんでした。春学期はお試しでと思っていましたが、教職課程の授業が面白くて、一番私に語りかけてきた感じがするのは教職概論です。教職っていい仕事だなあと思いました。
平野
教職の学校教育社会学でジェンダーと教育に関する講義を受けた時、自分のジェンダーの感覚と都内在住の学生の感覚にすごいズレを感じました。私の郷里は阿蘇の方で、祖父母の世代に女の人が大学なんてと言われました。こんな経験をしている子が多分大勢いると思い、今は教員への思いが強まっています。
吉冨
今書いているレポートなど、私はふわっとした論理を持ち込むところがあります。学問として科学的に扱うために、どう批判的に見ていくかという点で、教育社会学が自分に合うと思います。
― 皆さんとても前向きで、聞き手は学生時代を恥じるばかりです。今後の展望はどうでしょうか。
佐賀
私は日本語教育の道か、学校教育か、決めかねています。かつて自分も悩んだ、二つの言語ともうまく使えない、自分を表現できない、そんな子どもを支援できるところに進みたいと思います。
平野
教職について断言はできません。将来は、今までの自分の人生を見つめ直して、誰かに還元できる仕事に就けると良いなあと思います。
松下
最終的には、私が学んで力になれることがあるならば、困っている人たちのために働きたいと思います。教育を通して人を支援できるような仕事を、広く考えるようにしていきます。
吉冨
中学受験塾でバイトをしていますが、大学での学びを通して、このバイトに疑問を持ったり、自分が信じてきたものが揺らいだりする感覚があります。現場に出て、疑問を感じて、自分が揺らいでという体験を続けて、将来の方向を決めたいと思っています。
藤村
私は大学に入ったからこそ、色々学んでいきたいと思っています。最終的には、幸せに生きたいです(笑)理想は、他の人のためになることが自分のためになったらいいなということです。それを叶えていくために、今は教育学に重きを置いて学んでいこうと思います。
― 有難うございました。皆さんのこれからが楽しみで仕方ない。二人の率直な感想です。
(文責・栗原 峰夫)
■ 会長 : 長尾 和洋(1986卒)
■ 副会長 : 片桐 智樹(1991卒)、杉浦 元一(1995卒)[新任](2026年1月24日着任)
■ 役員 : 伊藤 奈美予(1977卒)、栗原 峰夫(1982卒)、神林 達郎(1983卒)、栗原 明子(1985卒)、赤松 加奈子(1987卒)、森沢 洋子(1993卒)
■ 監事 : 大塚 治(1982卒)[新任](2026年6月1日着任)
※ 以上、会長、副会長(2名)、一般役員(6名)、監事が、定例の運営メンバーとなります。 新規役員絶賛募集中です!!
2026年11月8日(日) 14時15分 ~ 14時30分
1 . 開会宣言
2 . 活動報告 ( 長尾会長 )
3 . 会計報告 ( 会計担当・ 片桐 )
4 . 新任役員紹介(杉浦副会長 )
5 . 会計監査報告
6 . 閉会宣言
① 役員会開催(2025年9月13日、2026年1月24日、2026年5月23日)
② 会報誌「ROAD」発送作業(2025年9月13日)
③ 会員大会・講演会開催(2025年11月9日)
④ 学位授与式参列・卒業生へのメッセージ(2026年3月24日)
(令和7年6月1日~令和8年5月31日) (単位:円)
教育学科同窓会の各種活動(HP更新管理、会報誌「ROAD」の製作、会員大会の企画・運営他)は、同窓会会員の皆さまの「終身会費:10,000円」にて成り立っています。2026年9月1日現在、同窓生の約30%の皆さまには会費の納入をいただいておりますが、会計報告の通り毎年の繰越金も減少し続けており厳しい状況です。
任意のお支払いではありますが、終身会費未納の方には、重ねて会費の納入をお願いする次第です。
また、寄付金に関しましても随時受付中です。ご検討いただけましたら幸いです。
より一層多くの皆さまのご協力を切にお願いいたします。
→ 振込先 : 三井住友銀行 三鷹支店 普通 7147840 上智大学教育学科同窓会
✓ 振込ご依頼人の前に、「卒年」を西暦末尾2桁で付けてください。(例 : 86ナガオカズヒロ)